大型イベントの飲食で必要な電源容量の計算方法|厨房機器・仮設電源の考え方

大型イベントの飲食で必要な電源容量の計算方法
大型イベントの飲食エリアを設計するとき、厨房機器と同時に確認しなければならないのが電源です。
冷蔵庫、冷凍庫、製氷機、スチームコンベクションオーブン、IH、電子レンジ、保温機器、POSレジ。イベントで使用する機器が増えるほど、必要な電源容量も大きくなります。
特に常設厨房のない展示会場、ホール、屋外イベントでは、厨房機器を決めた後に「会場の電源では足りない」と分かると、機器変更や仮設電源工事が必要になることがあります。
逆に必要以上の電源を確保すれば、仮設電源や電気工事の費用が大きくなる可能性があります。
大型イベントの飲食では、厨房機器を並べてから電源を考えるのではなく、販売数、メニュー、必要機器、電源容量を一つの流れで設計することが重要です。
この記事では、大型イベントの飲食ブースや仮設厨房で必要になる電源容量を、厨房機器からどのように考えるのかを解説します。
大型イベントの電源容量は使用する厨房機器から積み上げる
飲食エリアに必要な電源容量を出すには、まずイベント当日に使用する電気機器を洗い出します。
例えば、次のような機器です。
- 冷蔵庫
- 冷凍庫
- 製氷機
- スチームコンベクションオーブン
- 電気フライヤー
- IH調理器
- 電子レンジ
- 炊飯器
- ホットショーケース
- 保温機器
- ドリンク機器
- POSレジ
- プリンター
- 照明
それぞれの機器について、メーカーの仕様書や銘板から定格消費電力、電源仕様、必要容量などを確認します。
重要なのは「厨房全体で何kWくらいだろう」と感覚で決めないことです。
使用機器を1台ずつ積み上げて必要容量を把握するところから始めます。
そもそも何の厨房機器が必要なのかについては、大型イベントの仮設厨房に必要な設備とは?電源・給排水・厨房機器の設計方法で詳しく解説しています。
厨房機器を決める前に販売数を確認する
必要な電源容量は、厨房機器から決まります。
そして必要な厨房機器は、販売する商品と数量から決まります。
例えば1日1,000食を販売するイベントと、1日9,000点を販売するイベントでは、同じメニューでも必要な厨房能力が違います。
大量販売するためにスチコンを追加すれば、その分だけ電源も必要になります。
冷凍商品のストック量が増えれば、冷凍設備も増える可能性があります。
ドリンクの販売数量が増えれば、製氷能力や冷蔵能力も見直す必要があります。
つまり、
販売数 → メニュー → 必要処理能力 → 厨房機器 → 電源容量
という順番で考えると、必要な電源を決めやすくなります。
販売数量の予測については、大型イベントで必要な飲食販売数の計算方法で詳しく紹介しています。
kWとkVAの違いを理解する
厨房機器や電源設備を確認すると、「kW」と「kVA」という単位が出てきます。
似ていますが、同じ意味ではありません。
kWとは
kWは、機器が実際に消費する有効電力を表す単位です。
厨房機器の仕様書に「消費電力3.0kW」などと記載されていることがあります。
kVAとは
kVAは、電源設備側で考える際に使われる皮相電力の単位です。
交流機器では電圧と電流の位相差などがあるため、kWとkVAが必ず同じになるとは限りません。
基本的な関係は、
kW = kVA × 力率
です。
例えば力率0.8の機器が4kWの有効電力を必要とする場合、単純計算では必要な皮相電力は5kVAになります。
4kW ÷ 0.8 = 5kVA
ただし、厨房機器ごとに電気的な特性や仕様が異なります。
実際の仮設電源設計では、メーカー仕様、会場設備、施工業者の設計条件を確認して決定します。
100Vと200Vを分けて確認する
総容量だけを確認すればいいわけではありません。
厨房機器によって必要な電圧が違います。
一般的な小型機器やPOSなどでは100Vを使用するものが多い一方、大型厨房機器では200V電源を必要とするものがあります。
そのため機器リストには、少なくとも次の情報をまとめます。
- 機器名
- メーカー・型番
- 台数
- 100Vまたは200V
- 単相・三相
- 定格消費電力または必要容量
- プラグ・接続方法
例えば総容量としては足りていても、必要な場所に200V回路がなければ、その厨房機器は使用できません。
「会場全体で何kVA使えるか」だけでなく、どの電源を、どこで、何台の機器が使用するのかまで落とし込む必要があります。
単相と三相も確認する
200V機器の場合は、単相200Vなのか三相200Vなのかも確認します。
同じ200Vでも電源方式が違えば、そのまま接続できるとは限りません。
大型の冷蔵・冷凍設備や厨房設備では、機種によって三相電源を使用するものがあります。
機器をレンタルするときも、「200Vだから使える」と判断せず、型番ごとの電源仕様を確認します。
イベント直前に電源方式が合わないことが判明すると、機器変更や追加工事につながるため、厨房機器選定の段階で確認しておきます。
必要電源容量の基本的な計算方法
まずは使用する機器ごとの必要容量を一覧化します。
簡単な例として、次の厨房を考えてみます。
| 機器 | 台数 | 1台あたりの容量 | 合計 |
|---|---|---|---|
| スチコン | 2台 | 10kW | 20kW |
| IH調理器 | 4台 | 3kW | 12kW |
| 冷蔵庫 | 2台 | 0.5kW | 1.0kW |
| 冷凍庫 | 2台 | 0.8kW | 1.6kW |
| 製氷機 | 2台 | 0.7kW | 1.4kW |
| 保温機器 | 4台 | 1kW | 4kW |
この例では、単純合計すると40kWです。
ただし、これはあくまで電力を単純に積み上げた例です。
実際には各機器の仕様、力率、電源方式、始動時の電流、同時使用条件などを確認する必要があります。
そのため、単純合計した40kWをそのまま「40kVAの電源があれば大丈夫」と判断することはできません。
厨房機器を全部同時に使う時間を考える
イベント中に、すべての厨房機器が常に最大出力で動いているとは限りません。
例えばスチコンはピーク前に集中して使用し、営業中は保温中心になることがあります。
一方、冷蔵庫や冷凍庫は営業中も継続して稼働します。
炊飯器を複数台使用する場合、炊飯開始のタイミングが重なる可能性もあります。
重要なのは、機器の定格容量を並べるだけではなく、イベントのどの時間帯に何が同時稼働するのかを確認することです。
ピーク時の厨房を想定する
特に確認したいのが、営業開始前と販売ピーク前です。
加熱機器を複数台使用しながら、冷蔵庫、冷凍庫、製氷機なども稼働する時間帯があります。
営業中より仕込み時間の方が電源負荷が高くなる厨房もあります。
販売時間だけを見て電源容量を決めると、仕込み時に容量不足になる可能性があります。
始動時に大きな電流が流れる機器にも注意する
冷蔵庫、冷凍庫、製氷機など、コンプレッサーやモーターを使用する機器では、始動時に通常運転時より大きな電流が流れる場合があります。
定常運転時の消費電力だけを見てギリギリの電源設計にすると、複数機器の始動が重なったときに問題が起きる可能性があります。
特に仮設電源や発電機を使用する場合は、機器の定格だけではなく始動条件も施工業者へ共有します。
大型イベントでは「計算上ギリギリ足りる」状態よりも、現場で安定して運用できる設計が重要です。
電源容量には余裕を持たせる
イベント当日は、計画段階では想定していなかった機器が追加されることがあります。
保温機器を追加したい。
電子レンジをもう1台使いたい。
POSを追加したい。
ドリンク用の冷蔵機器を増やしたい。
こうした変更が本番直前に発生することは珍しくありません。
最初から電源容量を限界まで使う設計にすると、機器を1台追加しただけで回路や電源計画の見直しが必要になります。
だからといって大きすぎる容量を確保すれば、仮設電源や施工費が増える可能性があります。
必要容量を正確に積み上げたうえで、現場条件に応じた余裕を持たせることが重要です。
電源容量だけでなく回路分けまで考える
例えば100V・1,500Wの機器を複数使用する場合、会場全体の電源容量に余裕があっても、同じ回路へ集中させれば使用できないことがあります。
そのため厨房レイアウトを作るときは、機器の配置と一緒に回路も考えます。
加熱機器。
冷蔵・冷凍設備。
ドリンク設備。
POS・会計。
照明。
それぞれをどの系統から取るのかを整理します。
特に重要機器については、一つの回路トラブルで厨房全体が停止しないような設計も検討します。
厨房レイアウトと電源位置を同時に決める
厨房機器を決めて必要電源容量を計算しても、電源位置と機器配置が合っていなければ現場では使いにくくなります。
例えばスチコンを設置したい場所から200V電源が離れている。
冷凍庫を並べたい場所に必要な回路がない。
延長コードがスタッフの動線を横切る。
こうした状態は避けたいところです。
大型イベントでは、厨房機器リスト、厨房レイアウト、電源図を別々に作るのではなく、互いに確認しながら設計します。
厨房と販売エリア全体の配置については、大型イベントの飲食ブース設計|会計・厨房・受け渡しの動線をどう作る?で詳しく解説しています。
厨房機器を増やせば販売数が増えるとは限らない
販売数を増やすために、加熱機器を追加することがあります。
しかし厨房機器を増やせば、その分だけ電源容量も増えます。
さらに加熱能力だけ上がっても、盛り付けや受け渡し能力が追いつかなければ、イベント全体の販売能力は上がりません。
例えばスチコンを1台から2台へ増やして加熱能力が倍になっても、盛り付け工程が1時間600点のままなら、そこで商品が滞留します。
電源容量を増やして機器を追加する前に、どの工程がボトルネックになっているのかを確認します。
必要な販売レーン数については、大型イベントで必要な飲食レーン数の計算方法で詳しく紹介しています。
メニュー開発の段階から電源負荷を考える
電源問題は、厨房設備を選ぶ段階だけの話ではありません。
メニューによって必要な厨房機器が変わるためです。
フライ商品が多ければフライヤー能力が必要です。
オーブン加熱商品が多ければスチコンなどの加熱能力が必要になります。
冷凍商品が多ければ冷凍保管能力も必要です。
ドリンク販売が多ければ、冷蔵・製氷設備の負荷が大きくなります。
そのため会場の電源条件が厳しい場合、厨房機器を増やすのではなく、メニューや調理工程そのものを変更する方法もあります。
大量提供を前提とした商品設計については、大型イベントで大量提供できるフードメニューの作り方|提供速度・原価・厨房設備から考えるで詳しく解説しています。
会場電源で足りない場合は仮設電源を検討する
展示会場やイベントホールには電源設備がありますが、飲食エリアで自由に必要容量を使用できるとは限りません。
会場全体では、ステージ、映像、音響、照明、物販、展示ブースなどでも大量の電力を使用します。
そのため飲食エリアで必要な容量を早い段階で会場や施工会社へ伝える必要があります。
会場設備だけで不足する場合は、仮設分電盤、追加幹線、屋外であれば発電機などを検討することになります。
この部分はイベント会場の設備条件によって大きく変わります。
「厨房で40kW必要だから40kW分を用意する」というだけではなく、接続方法、配線距離、回路構成、電圧、設置場所、安全対策まで含めて電気工事業者と確認します。
発電機は容量だけで選ばない
屋外イベントなどで発電機を使用する場合も、必要kVAだけを見て決めるものではありません。
使用機器の種類。
始動電流。
単相・三相。
100V・200V。
負荷の変動。
連続運転時間。
燃料補給。
設置場所。
騒音。
排気。
こうした条件を確認します。
特に飲食エリアでは冷蔵・冷凍設備を継続稼働させる必要があるため、電源停止が食材管理へ影響する可能性があります。
発電機を使用する場合も、厨房機器一覧と運転条件を施工会社へ共有して容量を決定します。
電源トラブルが起きた場合の優先順位を決めておく
本番中に電源トラブルが発生した場合、すべての機器を同じ優先順位で復旧させるとは限りません。
冷蔵・冷凍設備。
加熱設備。
保温設備。
製氷機。
POS。
照明。
それぞれ停止したときの影響が違います。
例えば冷蔵・冷凍設備の停止が長引けば、単純な販売停止だけでなく食材管理にも影響します。
大型イベントでは、どの機器を重要設備として扱うのかを事前に整理しておくと、トラブル発生時の判断がしやすくなります。
機器リストは電源表として一元管理する
大型イベントでは厨房機器が増えるため、口頭やメールだけで電源情報を管理すると漏れが起きやすくなります。
そこで厨房機器リストに電源情報をまとめます。
電源表に入れておきたい項目
- 機器名
- メーカー
- 型番
- 台数
- 使用場所
- 電圧
- 単相・三相
- 消費電力
- 必要容量
- 接続方法
- 使用時間帯
- 備考
この一覧を厨房担当、イベント制作会社、会場、電気施工会社で共有します。
機器が追加・変更された場合も、この表を更新すれば必要電源容量への影響を確認できます。
電源容量はスタッフ数や販売レーンともつながっている
大型イベントの飲食では、電源だけを独立して考えることはできません。
例えば販売数を増やす。
そのために厨房機器を増やす。
電源容量が増える。
同時に機器を操作するスタッフも増える。
完成商品が増えれば、盛り付けや受け渡しレーンも増やす必要が出てきます。
つまり、
販売数 → 商品 → 厨房能力 → 電源 → スタッフ → 販売レーン
はすべてつながっています。
必要スタッフ数については、大型イベント飲食で必要なスタッフ人数の計算方法で詳しく解説しています。
大型イベントの電源は厨房設計と同時に決める
大型イベントの飲食で必要な電源容量は、会場が決まった後に「何アンペア使えますか」と確認するだけでは十分ではありません。
まず販売数を予測する。
販売するメニューを決める。
1時間あたり必要な厨房処理能力を出す。
必要な厨房機器と台数を決める。
各機器の電源仕様を確認する。
同時使用する機器を確認する。
必要な電源容量と回路を設計する。
会場設備で不足する場合は仮設電源を検討する。
この順番で組み立てていきます。
特に数千食を扱うイベントでは、メニュー変更や機器1台の追加だけでも必要電源が変わることがあります。
厨房設計と電源設計を別々に進めるのではなく、商品開発から販売オペレーションまで含めて一つの計画として管理することが重要です。
Team Cafe Tokyoでは、大型イベントやIPイベントにおける商品開発だけではなく、販売数の予測、厨房機器選定、仮設厨房、必要電源、給排水、スタッフ、販売レーン、受け渡しまで含めた飲食設計を行っています。
大型イベントの飲食企画・運営については、Team Cafe Tokyo 大型イベント飲食サービスでも対応内容をご紹介しています。
会場は決まっているものの「何kVA必要なのか分からない」「予定しているメニューを会場電源で提供できるのか分からない」といった段階からでも、販売計画と厨房機器を整理して設計することができます。
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