
飲食企画運営会社の選び方
大型イベントで飲食を実施するとき、「どの飲食運営会社に依頼するか」は、イベント全体の満足度や売上を左右する重要な判断です。数百人規模のイベントであれば既存店舗の延長線上でも対応できるケースがありますが、数千人から1万人規模になると、通常の飲食店とはまったく違う設計が必要になります。
大型イベントの飲食では、料理を作れること以上に、限られた時間・スペース・設備の中で、必要な数量を安全に販売できる仕組みを作れるかが重要です。
例えば1万人が来場するイベントで、3,000人が飲食を利用し、1人平均2点購入すると仮定すると、必要な販売数は6,000点です。営業時間が7時間なら、単純平均でも1時間あたり約857点になります。
しかし実際には、注文が均等に発生するわけではありません。開場後、昼食時間、ステージ終了直後など、特定の時間帯に注文が集中します。そのため大型イベントでは、「1日に何食作れるか」だけではなく、ピークの30分、60分で何点処理できるかまで設計する必要があります。
この記事では、大型イベントの飲食運営会社を選ぶ際に、主催者・イベント制作会社・広告代理店・IPホルダーが確認しておきたいポイントを、大量販売を前提とした飲食設計の視点から解説します。
大型イベントの飲食運営会社に求められる仕事とは
大型イベントの飲食運営というと、「キッチンカーを呼ぶ」「飲食店を集める」「フードブースを運営する」といったイメージを持たれることがあります。もちろん、それもイベント飲食のひとつです。
ただし、大規模イベントでひとつの飲食コンテンツを作る場合には、それだけでは足りません。
- 来場者数の想定
- 飲食利用率の予測
- 販売点数の予測
- メニュー構成
- 商品開発
- OEM商品の手配
- 原価設計
- 販売価格設定
- 仮設厨房設計
- 冷蔵・冷凍設備
- 加熱設備
- 電源容量
- 給排水
- 販売レーン
- レジ
- スタッフ配置
- 搬入
- 在庫管理
- 衛生管理
- 保健所対応
- 当日の追加製造や補充
つまり大型イベントの飲食運営とは、単純な飲食店運営ではありません。ひとつの期間限定飲食工場と販売店舗を、イベント会場の中に作る仕事に近いものです。
ここまでを一つの設計として考えられる会社かどうかが、大型イベントの飲食運営会社を選ぶうえで重要なポイントになります。
大型イベントの飲食運営会社を選ぶ8つのポイント
1.販売数を数字で予測できるか
最初に確認したいのが、販売数量をどのように決めているかです。「前回これくらい売れた」「来場者が多いので多めに用意する」といった感覚だけで発注数量を決めると、大型イベントでは大きな誤差が出る可能性があります。
販売予測の基本となる考え方の一つが、来場者数 × 飲食利用率 × 1人あたり購入点数です。
- 来場者数:10,000人
- 飲食利用率:30%
- 平均購入点数:2点
この場合、10,000人 × 30% × 2点で、想定販売数は6,000点となります。
ただし、実際の発注数はこれだけでは決められません。フード、デザート、ドリンクでは購入比率が異なり、価格、気温、イベント内容、購入特典、キャラクター人気などによっても商品の売れ方は変わります。
そのため商品ごとに、想定販売数、販売構成比、安全在庫、追加補充の可否、賞味期限・消費期限まで落とし込んで考える必要があります。
飲食運営会社を選ぶ際には、「何個用意するか」だけではなく、「なぜその数量になるのか」を説明できるかを確認するとよいでしょう。
2.メニューを提供速度から設計できるか
大型イベントの商品開発で非常に重要なのが、提供時間です。通常の飲食店の商品開発では、味、見た目、原価などが重視されますが、大型イベントではそこに提供秒数という考え方が加わります。
例えば1商品を完成させるまで120秒かかる場合、理論上1レーンで1時間に提供できるのは30点です。一方、30秒で提供できる商品なら1時間120点まで処理できます。
同じ10レーンでも、120秒の商品なら1時間300点、30秒の商品なら1時間1,200点と、理論上4倍の差が生まれます。
この違いは、そのまま行列、待ち時間、販売機会損失、必要スタッフ数、必要設備数、売上に影響します。
そのため大型イベント向けの商品は、単に完成度の高い料理を作るのではなく、大量販売できるように商品そのものを設計する必要があります。
- 仕込みを事前工場へ移す
- 現場では加熱や盛り付けだけにする
- 盛り付け工程を減らす
- ソースやトッピングを事前にポーション化する
- OEM商品を活用する
- 商品ごとに専用レーンを設ける
こうした工夫によって、商品の世界観や品質を維持しながら、提供速度を改善できます。
3.必要レーン数を計算できるか
大型イベントの飲食設計では、販売レーン数も重要です。必要レーン数は、「会場に何台置けるか」だけで決めるものではありません。
基本的には、ピーク時販売数 ÷ 1レーンあたりの処理能力から逆算して考えます。
例えばピーク1時間に1,000点の注文が想定され、1レーンが1時間60点処理できる場合、1,000 ÷ 60で約16.7となり、理論上は約17レーン必要になります。
ところが会場スペースの関係で10レーンしか設置できないのであれば、そのまま運営するのではなく、商品構成やオペレーション自体を見直す必要があります。
- SKUを減らす
- 提供時間を短縮する
- 事前製造比率を高める
- 会計と受取を分ける
- 商品チケット方式を採用する
- 受取レーンを商品カテゴリ別に分ける
大型イベントでは、商品を決めたあとでレーンを作るのではなく、会場条件と販売能力を見ながら商品構成そのものを調整することが重要です。
4.ピーク時間を考えているか
イベント飲食で失敗しやすいのが、1日の平均販売数だけを見てしまうことです。
例えば1日6,000点を6時間で販売する場合、単純平均では1時間1,000点です。しかし実際のイベントでは、時間帯によって注文数に大きな差が出ます。
- 11時台:500点
- 12時台:1,600点
- 13時台:1,400点
- 14時台:900点
- 15時台:700点
- 16時台:900点
この場合、平均1,000点に合わせた設備や人員配置では、12時台に処理能力を超える可能性があります。
大型イベントの飲食では、平均需要ではなくピーク需要に耐えられる設計が必要です。
特に、開場直後、昼食時間、ステージ終了後、物販終了後、終演前などは注文が集中しやすい時間帯です。
運営会社を選ぶときには、「1日の販売数」だけではなく、「ピーク時間に何点処理できる設計になっているか」を確認することが重要です。
5.厨房設備・電源・給排水まで設計できるか
大型展示場やイベントホールには、一般的な飲食店のような厨房設備が用意されていないことがあります。その場合は、イベントに合わせて仮設厨房を設計する必要があります。
- 冷蔵庫
- 冷凍庫
- 製氷機
- フライヤー
- IH調理器
- オーブン
- スチームコンベクションオーブン
- 電子レンジ
- 作業台
- シンク
- 給水設備
- 排水設備
こうした機材を並べれば終わりではありません。大型厨房設備は消費電力が大きいため、必要機材をすべて積み上げたうえで、使用電源容量を事前に算出する必要があります。
さらに設備配置と同時に、「何の商品をどの設備で何個処理するのか」まで結びつけることが重要です。
例えばオーブンを1台増やせば、必ず販売数が増えるわけではありません。加熱工程よりも盛り付け工程がボトルネックになっている場合、加熱設備だけを増やしても全体の処理能力は上がりません。
大型イベントでは設備の台数だけを見るのではなく、工程全体の処理能力を見る必要があります。
6.必要スタッフ数を工程ごとに計算しているか
イベントだからスタッフを多く入れれば安全、という考え方にも注意が必要です。人数を増やしすぎれば人件費が膨らみ、少なすぎれば行列や提供遅延につながります。
そのためスタッフ数は、会計、加熱、盛り付け、ドリンク、商品受渡し、補充、在庫管理、現場管理など、工程ごとに考える必要があります。
- 会計
- 加熱
- 盛り付け
- ドリンク
- 商品受渡し
- 補充
- 在庫管理
- 現場管理
さらに大型イベントでは、営業時間中ずっと同じ人数を配置するのではなく、ピーク時間だけ増員するという考え方も必要です。
例えば通常時間帯は30人で運営できても、昼のピークだけ40人必要になるのであれば、交代要員や短時間スタッフを組み合わせることで効率化できます。
重要なのは、「スタッフ○名」という結果だけではなく、「なぜその人数なのか」が説明できることです。
7.売上だけでなく利益まで設計できるか
大型イベントでは大きな売上が立つ一方で、運営コストも大きくなります。
- 商品原価
- 人件費
- 設備費
- 運搬費
- 消耗品費
- 電源工事費
- 給排水設備費
- 売上歩率
- 決済手数料
- 廃棄ロス
仮に売上が1,000万円あったとしても、運営コストが高すぎれば利益は残りません。そのため商品開発の段階から、売価 − 商品原価 − 運営コストまで見ながら商品構成を設計する必要があります。
例えば高原価率の商品ばかりを並べるのではなく、ドリンクやデザートなども組み合わせながら、イベント全体の粗利益を調整します。
飲食運営会社を比較する際には、売上予測だけではなく、原価、人件費、設備費などを含めた収支予測まで行えるかを確認することが重要です。
8.商品開発から当日運営まで一気通貫で見られるか
大型イベントでは、多くの会社が関係します。イベント制作会社、施工会社、設備会社、電気工事会社、食品メーカー、OEM工場、物流会社、スタッフ会社など、それぞれに専門分野があります。
分業すること自体に問題はありません。ただし飲食部分の設計まで細かく分断してしまうと、商品を作った会社は販売能力を考えていない、設備会社は商品工程を知らない、運営会社は設備変更ができない、といった問題が起こりやすくなります。
大型イベントでは、商品・設備・人員・販売がすべてつながっています。
商品工程が増えれば必要スタッフ数が増えます。提供時間が長くなれば必要レーン数が増えます。レーン数が増えれば必要スペースも増え、設備が増えれば必要電源容量も増えます。
つまり一つの条件を変更すると、別の設計にも影響します。そのため可能であれば、商品開発から設備・人員・販売オペレーションまで全体を見られる会社を選ぶ方が、計画を進めやすくなります。
飲食運営会社へ相談する前に準備しておきたい情報
正式なメニューが決まっていない段階でも、次の情報があれば飲食運営会社は概算設計を始めることができます。
- 開催日
- 営業時間
- 開催会場
- 想定来場者数
- 飲食スペースの広さ
- 希望する商品数
- 想定価格帯
- IP・キャラクター使用の有無
- 電源条件
- 給排水条件
- 搬入条件
- 過去イベントの販売実績
特に過去に同じイベントを開催している場合は、来場者数だけではなく、商品別販売数や時間帯別販売数があると、より精度の高い販売予測やレーン設計が可能になります。
大型イベント飲食でよくある失敗
メニューを先に決めすぎてしまう
企画段階で魅力的なメニューを作り込みすぎると、その後の検証で「大量提供できない」という問題が発生することがあります。
大型イベントでは、商品の企画性や見た目だけではなく、量産性・提供速度・設備条件まで同時に確認することが重要です。
SKUを増やしすぎる
商品数が増えるほど、仕込み、在庫、設備、スタッフ教育、補充、受取ミスなどの管理項目も増えていきます。
大型イベントでは、「商品数が多い=顧客満足度が高い」とは限りません。限られたSKUを高速かつ安定して提供する方が、行列を抑え、結果として顧客満足につながるケースもあります。
来場者数だけで在庫を決める
1万人が来場するから1万食必要、とは限りません。飲食利用率と1人あたりの平均購入点数を考える必要があります。
逆に、IPイベントやコラボイベントなど、1人が複数の商品を購入するイベントでは、来場者数以上の商品数が必要になることもあります。
平均販売数だけで人員を決める
1日の平均販売数に対して十分な人数を配置していても、ピーク時間だけ処理能力不足になることがあります。そのためスタッフ数や設備数は、必ず時間帯別の需要を見ながら設計する必要があります。
依頼前に飲食運営会社へ聞いておきたい質問
大型イベントの飲食運営会社を比較する場合は、実績だけでなく、どのような考え方でイベントを設計しているかを確認すると判断しやすくなります。
- 販売数量はどのように予測しますか?
- 商品ごとの提供時間は計測しますか?
- 必要レーン数はどのように計算しますか?
- ピーク時間の販売能力は確認しますか?
- 厨房設備・電源・給排水まで設計できますか?
- 商品別の原価や粗利益まで確認できますか?
- OEM商品の手配にも対応できますか?
- 現場スタッフ数はどのように決めますか?
- 売上だけでなくイベント全体の収支予測まで行えますか?
こうした質問に対して、「経験上これくらい」だけではなく、具体的な数値や計算根拠をもとに説明できるかどうかが、一つの判断材料になります。
大型イベントの飲食は販売する前の設計で結果が変わる
大型イベントの当日は、開催前に設計した仕組みを実行する時間です。売上や提供速度を大きく左右する判断の多くは、実はイベント当日ではなく開催前に終わっています。
- 何を販売するのか
- 何個販売するのか
- 何秒で提供するのか
- 何レーン必要なのか
- 何人必要なのか
- どの設備を使用するのか
- どこまで事前製造するのか
- どれだけ安全在庫を持つのか
これらを一つずつ数字に落とし込み、商品、設備、人員、販売のバランスを調整することで、大規模な飲食提供でも安定した運営が可能になります。
そのため大型イベントの飲食運営会社を選ぶ際には、単純なイベント実績の数だけを見るのではなく、「大量販売を成立させる設計能力があるか」を確認することが大切です。
大型イベントの飲食企画・運営について
Team Cafe Tokyoでは、イベントの規模や会場条件に合わせて、大型イベントの飲食企画から当日運営までをトータルで設計しています。
- フード・ドリンクの商品企画
- メニュー開発
- OEM商品の選定・手配
- 販売数量シミュレーション
- SKU構成
- 販売レーン設計
- 人員配置設計
- 厨房設備設計
- 電源・給排水計画
- 原価・収支設計
- 当日の飲食運営
大型イベントでは、「どの商品を作るか」だけではなく、「その商品を何点販売できる仕組みを作るか」まで含めて考えることが重要です。
イベント制作会社様、広告代理店様、IPホルダー様、イベント主催者様で、大型イベントの飲食企画・運営をご検討の場合はご相談ください。
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