ピーク販売数と提供時間から算出する
大型イベントの飲食運営で、販売数の予測と同じくらい重要なのが「何レーン必要なのか」という設計です。販売する商品数を決めても、その数量を時間内に提供できるレーン数がなければ、長い行列や待ち時間が発生し、結果として販売機会を失う可能性があります。
必要レーン数は、会場に置けるブース数やスタッフ数だけで決めるものではありません。基本となるのは、ピーク時間に何点売れるのか、そして1レーンが1時間に何点処理できるのかという2つの数字です。
例えばピーク1時間に1,200点の注文が予測され、1レーンで1時間60点提供できる場合、理論上必要なレーン数は20レーンです。
一方で、同じ1,200点の需要でも、提供時間を60秒から30秒へ短縮できれば、1レーンあたりの処理能力は倍になります。つまり必要レーン数も大きく変わります。
この記事では、大型イベントやゲームイベント、アニメ・キャラクターイベント、展示会、フェスなどで必要になる飲食レーン数について、基本的な計算方法からピーク需要、提供時間、SKU構成、人員、設備との関係まで解説します。
必要レーン数は「1日の販売数」だけでは決められない
例えば1日に6,000点を販売するイベントがあるとします。営業時間が6時間なら、単純平均は1時間1,000点です。
しかし実際のイベントでは、毎時間1,000点ずつ均等に売れるとは限りません。
- 11時台:500点
- 12時台:1,600点
- 13時台:1,400点
- 14時台:900点
- 15時台:800点
- 16時台:800点
この場合、1日の平均である1,000点を基準にレーンを設計すると、12時台の1,600点を処理できない可能性があります。
そのため必要レーン数を計算する際は、1日平均ではなくピーク時間の販売数を基準にすることが重要です。
飲食レーン数を計算する基本式
1.ピーク時間の販売数を出す
最初に必要なのは、ピーク時間に何点の商品が売れるかという数字です。
例えば1日6,000点を販売し、そのうちピーク1時間に25%の需要が集中すると仮定します。
6,000点 × 25% = 1,500点
この場合、ピーク1時間の想定販売数は1,500点です。
大型イベントでは、開場直後、昼食時間、ステージ終了後、物販終了後などに注文が集中することがあります。そのため過去実績がある場合は、時間帯別販売数を確認してピーク率を設定します。
初開催の場合は一つの数字に決め打ちせず、20%、25%、30%など複数パターンで試算しておくと安全です。
2.1レーンあたりの処理能力を計算する
次に、1レーンが1時間に何点の商品を提供できるかを計算します。
基本式は、
1レーンの1時間処理能力 = 3,600秒 ÷ 1商品あたりの提供秒数
です。
例えば1商品を60秒で提供できる場合、
3,600秒 ÷ 60秒 = 60点/時間
となります。
提供時間30秒なら120点/時間、45秒なら80点/時間です。
- 30秒:120点/時間
- 45秒:80点/時間
- 60秒:60点/時間
- 90秒:40点/時間
- 120秒:30点/時間
この提供時間が、必要レーン数を大きく左右します。
3.ピーク販売数を1レーン処理能力で割る
ピーク時間の販売数と、1レーンあたりの処理能力が分かれば、必要レーン数を計算できます。
基本式は、
必要レーン数 = ピーク1時間の販売数 ÷ 1レーンあたり1時間処理能力
です。
例えばピーク1時間1,500点、1商品あたり提供時間60秒の場合、1レーンあたりの処理能力は60点です。
1,500点 ÷ 60点 = 25レーン
つまり理論上は25レーン必要になります。
同じ1,500点でも提供時間を30秒まで短縮できれば、
1,500点 ÷ 120点 = 12.5レーン
となり、必要レーン数は約13レーンまで減ります。
このように大型イベントでは、レーンを増やすことだけでなく、提供時間を短くすることが非常に重要です。
提供時間を短縮すると必要レーン数は大きく変わる
大型イベントでは、商品開発とレーン設計を別々に考えることはできません。
例えばピーク時間に1,200点を販売するとします。
- 120秒提供:40レーン
- 90秒提供:約30レーン
- 60秒提供:20レーン
- 45秒提供:15レーン
- 30秒提供:10レーン
同じ販売需要でも、提供時間によって必要レーン数は大きく変わります。
そのため会場スペースが限られている場合、単純にレーンを増やすのではなく、商品工程そのものを見直す必要があります。
- 事前製造率を高める
- 現場調理工程を減らす
- 盛り付け工程を簡略化する
- ソースやトッピングを事前セットする
- OEM商品を活用する
- 受渡しだけで完結する商品を増やす
大型イベントの商品開発では、味や見た目だけでなく、何秒で提供できる商品なのかまで含めて設計することが重要です。
SKUごとに必要レーン数を分けて考える
全商品を同じレーンで販売すると詰まりやすい
複数の商品を販売する場合、全体販売数だけでレーン数を決めると実際のオペレーションとズレることがあります。
例えばフードAは30秒、フードBは90秒、ドリンクは15秒で提供できるとします。
この3商品を同じレーンで処理すると、時間のかかるフードBによって全体の流れが止まりやすくなります。
そのため大型イベントでは、商品カテゴリや提供時間によってレーンを分ける方法があります。
- フード専用レーン
- デザート専用レーン
- ドリンク専用レーン
- 高需要商品専用レーン
- 受取専用レーン
商品の販売構成比と提供速度を見ながらレーンを振り分けることで、全体の処理能力を上げることができます。
商品別の販売数から必要レーン数を計算する
商品ごとの需要をレーンへ割り当てる
例えばピーク1時間の販売予測が次のようになっているとします。
- 商品A:400点
- 商品B:300点
- 商品C:200点
- ドリンク:600点
商品Aが30秒提供なら1レーン120点/時間なので、
400 ÷ 120 = 約3.3レーン
となり、4レーン程度必要です。
商品Bが60秒提供なら、
300 ÷ 60 = 5レーン
商品Cが45秒提供なら、
200 ÷ 80 = 2.5レーン
となり、3レーン程度必要です。
このように商品ごとに必要レーン数を出し、そこから共有できるレーンと専用にすべきレーンを整理していきます。
理論値どおりに100%処理できるとは限らない
実際の現場では余裕率を持たせる
3,600秒を提供秒数で割った数字は、あくまで理論上の最大処理能力です。
実際の現場では、商品の受渡し、スタッフ同士の確認、食材補充、注文ミス、設備の復帰時間などが発生します。
そのため1レーンの最大能力を常時100%使用する前提で設計すると、少しの遅れで行列が伸びる可能性があります。
例えば理論上1時間120点提供できるレーンでも、実運用では80〜90%程度の能力で設計する方法があります。
仮に稼働率85%と設定した場合、
120点 × 85% = 102点/時間
となります。
ピーク需要1,000点なら、
1,000 ÷ 102 = 約9.8レーン
となり、10レーン程度が必要です。
大型イベントでは、理論上の最大能力ではなく、現場で安定して継続できる処理能力を基準に考えることが重要です。
レーン数を決めるときは会計方法も重要
注文・会計・商品受取をどこで分けるか
飲食レーンの処理能力は、商品の調理時間だけで決まるわけではありません。
注文を聞く、商品を確認する、会計する、商品を準備する、商品を渡すという工程を1か所で行うと、会計処理がボトルネックになる場合があります。
大型イベントでは、例えば次のように工程を分離する方法があります。
- 先に会計を行う
- 商品チケットを発行する
- 商品カテゴリ別の受取レーンへ移動する
- 受取レーンでは商品提供だけを行う
この方式では、受取レーン側で現金や決済処理を行わないため、商品の提供に集中できます。
特にSKUが多い大型イベントでは、会計能力と商品提供能力を分けて考えることで全体の処理速度を高められる場合があります。
レジ数と商品レーン数は別々に計算する
レーン設計で注意したいのが、会計レーンと商品受取レーンを同じ数にしなくてもよいという点です。
例えば会計は1件30秒で処理できる一方、商品受取は1点60秒かかる場合、それぞれ必要なレーン数は異なります。
また1会計あたり複数商品を購入するイベントでは、会計件数と商品提供点数も一致しません。
例えばピーク1時間1,200点販売、平均購入点数2点の場合、会計数は約600件です。
この場合、
商品提供能力は1,200点を基準
レジ能力は600会計を基準
として別々に設計する必要があります。
厨房の処理能力が足りなければレーンを増やしても意味がない
販売レーンと厨房能力を必ず連動させる
販売レーンを増やせば販売数が増えるとは限りません。
例えば販売口を20レーン用意しても、厨房側で1時間600点しか商品を作れないのであれば、それ以上の商品は提供できません。
そのためレーン数を計算する際には、
- 加熱設備の処理能力
- 盛り付け工程の処理能力
- 冷蔵・冷凍設備の容量
- 製氷能力
- 補充能力
- スタッフ数
まで確認します。
つまり必要レーン数は販売口だけの問題ではなく、厨房から商品受渡しまでの工程全体の処理能力によって決まります。
スタッフ数とレーン数の関係
1レーン1名とは限らない
レーン数を決めると、次に必要になるのが人員設計です。
ただし、1レーンにつき必ず1人という考え方ではありません。
商品工程によっては1人で複数レーンの商品を準備できる場合もあれば、1レーンに加熱・盛り付け・受渡しの複数スタッフが必要になる場合もあります。
そのため、
- 会計
- 加熱
- 盛り付け
- ドリンク
- 商品受渡し
- 補充
- 在庫管理
など、工程ごとに必要人員を計算します。
大型イベントでは、レーン数と人員数を別々に決めるのではなく、レーン設計をもとに工程別の必要人数を算出することが重要です。
会場に必要レーン数を置けない場合はどうするか
商品構成やオペレーションそのものを見直す
計算上20レーン必要でも、会場スペースの関係で12レーンしか設置できないことがあります。
この場合、無理に12レーンで運営するのではなく、商品構成やオペレーション自体を変更する必要があります。
- SKUを減らす
- 提供時間の長い商品を変更する
- 事前製造比率を高める
- 専用レーンを作る
- ドリンクを別エリアに分離する
- 会計と受取を分離する
- 販売時間を分散する
- 受取方法を変更する
大型イベントでは、必要レーン数に会場を合わせるだけでなく、会場の制約に合わせて商品設計を変えるという考え方も必要です。
大型イベントのレーン設計でよくある失敗
1日の平均販売数だけでレーンを決める
平均販売数だけを見ると、ピーク時間に処理能力不足になる可能性があります。必ずピーク時間の需要から必要レーン数を確認します。
理論上の最大処理能力をそのまま使う
現場では補充、確認、受渡し、ミス対応などが発生します。理論値だけではなく、実際の稼働率を考慮した処理能力で計算することが重要です。
すべての商品を同じレーンで販売する
提供時間が大きく異なる商品を同じレーンで処理すると、時間のかかる商品が全体の流れを止める可能性があります。
販売口だけ増やす
厨房や加熱設備の処理能力が不足している場合、販売レーンだけ増やしても販売能力は上がりません。厨房から受渡しまでの工程全体を見る必要があります。
会計件数と商品点数を同じ数字で考える
1人が複数商品を購入するイベントでは、会計件数と商品提供数は異なります。レジと商品受取レーンは別々に計算する必要があります。
必要レーン数を計算する基本手順
大型イベントの飲食レーン数を設計する場合は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 1日の販売数量を予測する
- 時間帯別の販売数を予測する
- ピーク1時間の販売数を設定する
- SKU別の販売構成比を設定する
- 商品ごとの提供時間を測定する
- 1レーンあたりの処理能力を算出する
- 稼働率を考慮して実運用能力を算出する
- ピーク販売数から必要レーン数を算出する
- 会場スペースと照合する
- 厨房設備の処理能力と照合する
- 必要スタッフ数を算出する
- 条件に合わなければSKUや商品工程を見直す
つまり、レーン数だけを単独で考えるのではなく、販売予測、商品設計、設備、人員を一つにつなげて設計することが重要です。
大型イベントの必要レーン数は「ピーク需要」と「提供速度」で決まる
大型イベントで必要な飲食レーン数を考える際、「何ブース置けるか」から考え始めるケースがあります。
しかし本来は、ピーク時間に発生する需要を予測し、その需要を処理するために必要な能力から逆算する必要があります。
基本となる考え方は、
必要レーン数 = ピーク販売数 ÷ 1レーンあたり実処理能力
です。
さらに商品ごとの提供時間、会場スペース、厨房能力、人員、会計方法などを組み合わせることで、実際に運営可能なレーン設計へ落とし込みます。
大型イベントの飲食では、レーン数を増やすことが目的ではありません。必要な販売数を、限られたスペースと人員の中で安定して処理できる仕組みを作ることが目的です。
大型イベントの販売数量予測について
必要レーン数を計算する前に、まず1日およびピーク時間に何点の商品が売れるのかを予測する必要があります。
来場者数、飲食利用率、平均購入点数、商品構成比、安全在庫などから販売数量を算出する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
大型イベントの飲食運営会社を選ぶ際のポイント
レーン数だけでなく、販売数量、人員、厨房設備、電源・給排水、収支まで含めて大型イベントの飲食運営会社を比較したい場合は、以下の記事も参考にしてください。
大型イベントの飲食企画・レーン設計について
Team Cafe Tokyoでは、想定来場者数や販売数量、商品ごとの提供時間、会場条件などをもとに、大型イベントの飲食レーン設計から厨房設備、人員配置まで含めた運営設計を行っています。
- 来場者数からの販売数量予測
- ピーク時間の需要予測
- 商品別提供時間の設計
- SKU別販売構成の設計
- 必要レーン数の算出
- 会計・受取動線の設計
- 必要スタッフ数の算出
- 厨房設備の処理能力計算
- 電源・給排水計画
- 原価・売上・収支シミュレーション
- 当日の飲食運営
大型イベントでは、販売したい数量と実際に販売できる処理能力を一致させることが重要です。
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