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氷だしコーヒーの作り方|粉と氷の分量・抽出時間・水出しとの違い

粉の上の氷で抽出し、氷を入れていないガラスサーバーにコーヒーを受ける様子

いつものドリッパーに、今日はお湯ではなく氷をのせる。ぽたり、ぽたりと落ちるしずくを待っていると、サーバーの底に少しずつコーヒーがたまっていきます。これが「氷だしコーヒー」。注ぎ方のテクニックよりも、粉と氷の量、水の通り道、待つ時間が一杯を左右する淹れ方です。

氷だしコーヒーは、氷が溶けた水をコーヒー粉に通して抽出する方法。「氷出し」とも表記されます。熱いコーヒーを氷で冷やす急冷式とは、氷の役割が違います。氷だしの氷は、冷やすためだけのものではなく、コーヒーを抽出する水そのものです。全日本コーヒー商工組合連合会の解説でも、この方法が紹介されています。

氷だしコーヒーは「氷を置く場所」と「粉全体を湿らせること」がポイント

最初に押さえたいのは、抽出に使う氷は粉の上、受けるサーバーは空にするということ。下のサーバーにも氷を入れると、その分の水が加わり、狙った濃さからずれてしまいます。冷やしたいときはサーバーの外側を冷却し、出来上がりを薄める水と、抽出する水を分けて考えるとわかりやすくなります。

家庭で試す出発点は、中挽きの粉15gに氷150g。氷を置く前に粉全体を湿らせ、溶けた水が偏らず通るように整えます。この粉と氷の組み合わせは、カルディコーヒーファームの公開レシピを参考にしたもの。出来上がりが150mLになる、という意味ではありません。

コーヒー粉の上に透明な氷を置いたドリッパーを上から見た抽出イメージ

※画像はイメージです

氷だし・水出し・急冷式は何が違う?

冷たいコーヒーの淹れ方は、「何度くらいの水で」「粉にどう触れさせるか」で整理すると、ぐっと理解しやすくなります。水出しには粉を水につける浸漬式と、水を少しずつ落とす滴下式があり、氷だしは後者に近い仕組みです。

淹れ方 主な抽出の仕組み 氷の役割 選ぶときの目安
氷だし 氷の融解水が粉の層を通る 抽出に使う水になる 手持ちのドリッパーで、低温の滴下抽出を試したい
水出し・浸漬式 粉を冷水などに一定時間つける 抽出自体には必須ではない 冷蔵庫でまとめて仕込みたい
水出し・滴下式 水を少しずつ粉に落として通す 器具や方法によって使う 滴下量を調整しながら抽出したい
急冷式 お湯で抽出した液体を氷で冷やす 冷却と仕上がりの加水を担う 飲みたいときに短時間で作りたい

たとえば、今すぐ一杯飲みたい日は急冷式、翌日の分を仕込みたい日は浸漬式、いつもの豆の違う表情を探したい日は氷だし。どれかが上位というより、時間の使い方と楽しみ方の違いです。基本の仕組みは水出しコーヒーの器具と淹れ方、お湯で淹れる方法はアイスコーヒーの抽出方法でも紹介しています。

味の特徴は?「まろやか」と「薄い」は別の話

氷だしの紹介でよく見かけるのは、まろやか、すっきり、なめらかといった言葉です。実際に抽出を試したCLUB THERMOSのコラムでも、口当たりの柔らかさが報告されています。ただし、これはその豆と条件での感想。どの豆でも同じ味になるわけではありません。

低温では、成分が溶け出す速さや抽出液の組成が、お湯を使う場合と変わります。一方で、味を決めるのは温度だけではなく、焙煎度、粉と水の比率、時間などの組み合わせ。冷水と温水での抽出を比較したRaoらの研究でも、焙煎度による違いが示されています。

そこで、「苦くないから成功」「色が濃いからよく抽出できた」と決めるより、飲んだときの厚みと後味を分けて見てみましょう。口当たりは柔らかくても風味が感じられるなら、軽やかな仕上がり。香りも味も頼りないなら、濃さや粉の濡れ方を見直す余地があります。

また、透明感にはフィルターも関係します。水出しでも紙でろ過する方法はあるため、「水出しは必ず濁り、氷だしだけが透明」と分けるのは早計。抽出する方法と、粉や微粒子を取り除く方法は別々に考えると、器具選びにも迷いにくくなります。

準備するものと、粉・氷・水の分量

用意するのは、安定して設置できるドリッパー、対応するペーパーフィルター、サーバー、はかり。抽出中の液温を確認できる温度計があると、置き場所も判断しやすくなります。サーバーには抽出液を受ける余裕を持たせ、冷蔵庫を使うなら、組み立てた状態で収まるか先に確かめておきましょう。

用意するもの 出発点となる量・条件 確認したいこと
コーヒー粉 15g・中挽き まずは普段飲んでいる豆で比較する
抽出用の氷 150g 飲用に適した水で作った、においのない氷
粉を湿らせる湯 約90℃。20〜30gを出発点に全体を湿らせる 使用量を量り、足した分も記録する
ドリッパーと紙 粉と氷が無理なく収まる容量 氷を縁より高く、不安定に積み上げない
受けるサーバー 洗浄済みで、抽出前は空 すすぎ水を捨て、中には氷を入れない

粉15g・氷150gと約90℃の湯は、先に紹介したカルディの方法を基準にしています。同社の湯量は「適量」のため、ここでは再現しやすいよう、20〜30gから粉の濡れ方を見て調整する出発点を設けました。豆や器具で必要量は変わるので、量だけで止めず、乾いた部分が残っていないかも確認してください。実測による最適値ではありません。

氷は「何個」より重さで管理するのがおすすめ。同じ3個でも製氷皿や市販の氷で大きさが違い、出来上がりの量も変わるためです。器具に入りきらないときは、全材料を同じ比率で減らすほうが、山盛りにするより扱いやすくなります。

ドリッパーで淹れる氷だしコーヒーの手順

1.器具を洗い、フィルターをセットする

手と器具を清潔にし、ドリッパーに対応した紙をセットします。フィルターをすすいだ場合、その水はサーバーから捨てておきます。抽出前のサーバーには水も氷も残さず、粉と氷の重さをそれぞれ量って準備します。

2.粉を入れ、表面を平らにならす

粉15gを入れ、軽く揺すって厚みをそろえます。押し固める必要はありません。粉が片側に寄っていると、氷が溶けた水の通り方も偏りやすくなります。山を作るより、均一な層を作るイメージです。

3.少量の湯で、粉全体を湿らせる

約90℃の湯を少しずつ注ぎ、粉全体に行き渡らせます。20秒ほど置くのはカルディの方法を参考にした目安。少量の湯で湿らせる工程があるため、この方法は厳密には「最初から最後まで氷だけ」ではありません。

お湯を使わず、水で粉全体を湿らせる方法もあります。どちらを選んでも大事なのは、乾いたままの粉を残さないこと。お湯と水を比較するなら、粉量・氷量・湿らせる水量をそろえ、変更する条件を一つに絞ると違いを追いやすくなります。

4.粉の上に氷を置き、低温で抽出する

氷150gをそっとのせ、融解水が粉を通って落ちるのを待ちます。氷を置くのは上のドリッパーです。サーバーを追加の氷で満たす急冷式とは混同しないようにしましょう。

家庭では、安定して置ける器具を使い、冷蔵庫内など低温管理できる場所で抽出するほうが扱いやすいでしょう。サーバーの外側を氷水で冷やす場合も、転倒や外の水の混入を防ぎ、液温を確かめます。外側だけ冷やしても粉の層まで同じ温度になるとは限らず、管理の代わりになるわけではありません。

5.氷と滴下の状態を確認し、全体を混ぜる

氷が溶け、通常の滴下が落ち着いたらドリッパーを外します。ただし、水が粉の上にたまったままなら、抽出完了ではなく流れの詰まりを疑う場面です。長く置き続けて解決しようとせず、後述する挽き目や紙の状態を確認してください。

サーバーにたまったコーヒーをやさしく混ぜ、出来上がりの重さを量ります。最初と後半に落ちる液体を混ぜてから飲むことで、一杯全体の濃さを判断しやすくなります。まずは追加の氷や水を入れずに味を見て、必要なら少しずつ調整しましょう。

抽出時間は何時間?時計だけでは決められない理由

公開されている室温での例では、カルディが約25℃で約4時間、全日本コーヒー商工組合連合会が20〜25℃で6〜7時間程度を紹介しています。粉量や器具も異なるため、この時間差をそのまま味の優劣と考えることはできません。

氷だしでは、成分が溶ける速さだけでなく、そもそも氷がどのくらいの速さで水になるかが効いてきます。室温、氷の大きさや形、器具との接触、冷蔵庫内の位置なども関係するため、「4時間たてば必ず完成」とは言い切れません。

冷蔵庫内では室温の例より氷が溶けにくく、さらに時間がかかることがあります。室温の4〜7時間を、冷蔵庫内の完成時刻として使わないことが大切です。時間を短縮しようと日なたや熱源の近くに移すより、急いで飲みたい日は急冷式を選ぶほうが合理的です。

抽出中は「氷が残っているか」「水がたまっていないか」「液温を管理できているか」の三つを見ます。初回は在宅時に小量から試すと、次に仕込む時間の見当がつけやすくなります。室温で一晩放置することを、標準の手順にはしないでください。

氷150gでもコーヒー150gにならない。比率と出来上がり量の考え方

レシピを比べるときに混乱しやすいのが、「注ぐ水の量」と「出来上がったコーヒーの量」です。粉と紙には液体が残るため、投入した氷がすべてサーバーに回収されるわけではありません。最初に湿らせた湯も、抽出に使った水量に含めます。

たとえば粉15g、氷150g、湿らせる湯20gなら、投入する水分は合計170g。粉:総水量は15:170、約1:11.3です。「氷だけで1:10」と「湯を含めて1:10」では条件が違います。

出来上がりを考える簡易式は、回収液量 ≒ 氷+追加した水や湯−粉や器具に残る液体。仮に30gが残ったなら、150+20−30=約140gになります。30gは計算を説明するための仮定であり、吸水量の実測値ではありません。コーヒー成分の移動や蒸発なども省いた概算なので、実際にはサーバーを量るのが確実です。

2杯分に増やすときも、材料を2倍にすれば時間まで2倍、とは限りません。粉の層が厚くなり、氷の溶け方も変わります。同じ味を再現したいなら、一度うまくいった量を単位にして仕込むか、増量した条件を別の記録として残しましょう。

豆・挽き目・氷はどう選ぶ?まず一つずつ変えてみる

最初は普段飲んでいる中煎り〜深煎りの豆と、中挽きを出発点にすると比較しやすくなります。深煎りしか使えないわけではありません。焙煎の違いから選びたいときは、浅煎り・中煎り・深煎りの特徴も参考にしてください。

粉を細かくすると表面積は増えますが、滴下式では水の通りやすさも変わります。細かくすれば必ずおいしくなる、という単純な話ではなく、微粉が多いと流れが悪くなることも。逆に、極端に粗い粉では水が早く抜け、物足りない味に感じることがあります。

薄いからといって、粉量、挽き目、氷量を一度に変えると、何が効いたかわからなくなります。まず粉を均一に湿らせたか確認し、それができていれば挽き目を少しだけ調整する、と順番を決めておくのがおすすめです。

氷も同様に、重さと大きさを分けて考えます。同じ150gでも小さな氷と大きな塊では水になる速さが変わり得ますが、「透明な氷だから必ず長時間」「大きいほど必ずおいしい」とは限りません。最初は入手しやすい氷を使い、種類と重さをそろえることから始めましょう。

薄い・落ちない・味がばらつくときの直し方

気になる状態 最初に確認すること 次の一杯で変えること
薄く、水っぽい すすぎ水やサーバー内の氷が残っていないか。粉に乾いた部分がないか 余計な加水をなくし、粉全体を湿らせる
薄く、滴下も速い 極端に粗い粉や、粉層の片寄りがないか 表面をならし、それでも薄ければ挽き目を少し細かくする
氷は溶けたのに落ちない 粉の上に水がたまっていないか。微粉や紙の折れ込みがないか 対応する紙を正しくセットし、挽き目を少し粗くする
濃すぎる 粉量と実際の回収液量を確認する 完成後に少量ずつ水を足して好みを探し、加水量を記録する
味が日によって変わる 氷の重さ・大きさ、湿らせる湯量、置き場所が同じか はかりを使い、液量と時間も記録する
いつまでも氷が残る 冷蔵庫内の温度や氷の大きさを確認する 次回は同じ重さで氷を小さくする。急ぐ日は別の抽出方法へ

水が粉の通りやすい部分へ偏ると、全体を十分に使えないことがあります。専門用語ではチャネリングと呼ばれる現象です。「何時間かけたか」だけでなく、終わった粉に乾いた箇所や大きな偏りがないかを見ると、次の調整につながります。

衛生管理を外れて長時間置いたものや、状態に不安があるものは、味の調整で飲み切ろうとしないこと。ここでの対策は、基本的に次の抽出を良くするためのものです。

もう一歩詳しく。濃度と抽出収率を分けると調整しやすい

専門性を深めたい人は、「濃い」と「よく抽出できた」を分けてみてください。コーヒーの濃度は、出来上がった液体に溶けている成分の割合。一方、抽出収率は、使った粉のうちどれだけの成分を取り出したかを見る考え方です。

コーヒー用の屈折計で測るTDSは、溶けている成分の割合を見積もる指標です。回収した液体から求める簡易的な式は、抽出収率(%)≒ 液体の重さ(g)×TDS(%)÷粉の重さ(g)。粉15gから140gを回収し、TDSが1.5%だったと仮定すれば、140×1.5÷15=14%です。

この14%は説明用の計算で、おいしさの合格ラインではありません。粉に残った液体などを含めた全成分の回収率とも区別します。また、一般的な糖度計のBrix表示を、そのままコーヒーのTDSに置き換えることはできません。測定器の用途と換算方法を確認する必要があります。濃度と収率については、計測器メーカー・アタゴの解説も参考になります。

家庭では測定器がなくても十分楽しめます。豆、粉量、氷量、湿らせる水量、時間、出来上がり量に、「軽い」「渋い」「後味が好き」といった感想を添えるだけでも、好みの一杯に近づけます。数字は味を決めつけるためではなく、再現するために使うと役立ちます。

保存と衛生管理。氷を使っていても室温放置は避ける

上に氷が残っていても、下にたまったコーヒーまで同じ温度とは限りません。最初に少量のお湯を使う工程も、飲み物全体を殺菌する工程ではありません。清潔な器具と飲用の水を使い、抽出中も出来上がり後も、冷たさを管理することが大切です。

カナダ保健省の食品安全ガイドでは、冷蔵庫を4℃以下に設定すること、手や作業面を清潔にし、生の肉や魚の汁がほかの食品に触れないよう分けて保管することが案内されています。冷蔵が必要な食品は速やかに冷蔵庫へ。これは食品全般の基本であり、氷だし専用の抽出条件や保存期限を保証するものではありません。

家庭では飲む分だけ作り、出来上がりは清潔な容器に移してふたをし、速やかに冷蔵して早めに楽しみましょう。保存できる日数は、器具の清潔さや温度、取り扱いで変わるため一律には決められません。見た目やにおいだけで安全を判断しないことも大切です。ミルクは保存容器へまとめて足さず、飲む直前に必要な分を合わせるほうが管理しやすくなります。

カフェで提供する場合は、家庭向けの分量を拡大する前に、仕込み量、液温、抽出開始・終了時刻、保存条件を決めるところから。営業時間内に何杯出せるかは、ドリッパーの数だけでなく、冷蔵スペースと実際の回収量にも左右されます。販売時の衛生管理計画に合わせて工程を確認し、家庭向けの抽出例をそのまま保存期限の根拠にはしないでください。

氷だしコーヒーのよくある疑問

カフェインは少なくなる?

低温だからといって、カフェインが少ないとは言い切れません。Raoらによる2020年の研究でも、水出しと温水抽出の両方でカフェインが測定されています。この研究の水出しは室温で粉を水に浸す方法で、氷を溶かして滴下させる抽出とは別です。数値をそのまま氷だしへ当てはめず、抽出法の名前だけでカフェインの少なさを判断しないこと。控えたいときは、豆の表示と飲む量も確認しましょう。

酸味や苦味がまったく出ない?

どちらもゼロになるわけではありません。味覚としての酸味と、測定したpHや酸の量も同じものではなく、豆と焙煎、濃度、温度が組み合わさって印象が変わります。「酸が出ない」「胃にやさしい」といった説明へ飛躍させず、好みの飲み口を探す抽出法として楽しむのがおすすめです。

ドリッパーを二つ重ねる必要はある?

必須ではありません。粉の上に直接氷を置く方法のほか、別の容器に氷を入れて上から滴下させる方法もあります。ただし、器具を不安定に重ねるのは避けたいところ。自宅では、まず一つのドリッパーに無理なく収まる量で試すと始めやすいでしょう。

抽出後も同じ粉を使える?

同じ味を再現したいなら、次の一杯には新しい粉を使います。一度抽出した粉では成分の残り方が変わり、長時間湿った状態の粉を取り置くと衛生面の管理も難しくなります。

氷を増やせば濃くなる?

粉の量を変えずに氷だけ増やすと、抽出に使う水量が増えます。回収される成分量が同じ割合で増えるとは限らないため、濃くする方法とは言えません。氷だしは「氷をたくさん置くこと」より、粉と総水量のバランスを整えること。ゆっくり待った一杯の、どんなところが好きだったかを覚えておくのが、次の一杯への近道です。

参考資料:カルディの抽出例、全日本コーヒー商工組合連合会、CLUB THERMOSの抽出報告、Raoら(2020)、カナダ保健省の食品安全ガイド。数値の計算例は条件を仮定した説明です。

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