TCT JOURNAL

飲食店居抜き物件の選び方|厨房・設備・契約の確認項目

メアリーキッチン 高円寺

居抜きのメリットを活かす、飲食店の物件・設備・契約の確認方法

居抜き物件の魅力は、前の店が使っていた厨房機器や内装を買い取ったり、無償で引き継いだりして、新しく揃える費用を抑えられることです。調理設備、カウンター、給排水などを自分の店でも使えれば、工事の手間や開業準備の負担も軽くできます。

ただし、物件に残っているものがすべて譲渡対象とは限りません。この記事では、店舗と設備を引き継いで新しい飲食店を開く方に向けて、「使える設備を確かめる」「不足を補う」「契約条件を揃える」という順番で判断を整理します。

内見・引渡しチェックリストを使う / 物件・居抜き選びの記事一覧

1.有償譲渡・無償譲渡・貸与を分けて考える

「造作譲渡料あり」は、内装や設備などについて対価を支払って引き継ぐ形です。一方、売主や貸主との合意によって、設備を無償で譲り受けられる場合もあります。買い替えなくてよい設備が多いほど、新規購入費を抑えやすくなります。

ここで分けたいのが、「無料でもらう」と「無料で借りて使う」です。どちらも初期支出を抑えられますが、所有者や交換・処分の権限が同じとは限りません。残置物という呼び方だけで判断せず、各設備の所有者、譲渡対象、修理負担を契約書と設備一覧で確認します。参考:飲食店ドットコム・居抜きの基礎知識。

2.メニューを工程に分け、残す設備を選ぶ

設備を見てからメニューを決めると、使わない機器まで引き継いでしまいます。まず主力商品を仮決めし、「保管→仕込み→加熱→盛付→提供→洗浄」の工程を書き出しましょう。冷たい料理が中心の店と、炒め物・揚げ物が集中する店では、必要な設備が異なります。

TCTでは検討用の整理として、設備を「残す」「直して使う」「追加する」「撤去する」「未確認」の五つに分けることを勧めます。未確認を使える設備として数えないことが、居抜きの経済性を見誤らないための要点です。

3.ガス・電気・排気は、機器の有無と能力を別に確認

コンロやダクトがあっても、予定する調理を支えられるかは別の話です。機器の型番・ガス種別・電源仕様を控え、同時使用を想定した供給能力、排気経路、給湯、排水を専門業者に確認してもらいます。機器の銘板だけで建物側の余力までは分かりません。

能力が足りなければ、増設できるか、貸主の承諾が必要か、工事費と納期はどの程度かを調べます。外壁や共用部に関わる工事は、自店の判断だけでは進められません。「あとで工事すればよい」ではなく、実施できる工事と費用を確かめてから比較します。

4.設備一覧に「残す・持ち出す・リース」を明記する

冷蔵庫、製氷機、食洗機、シンク、手洗い器、給湯器、換気設備、空調、棚、作業台について、写真と型番を設備一覧に対応させます。引渡し日に残るか、前の店が持ち出すか、貸主の設備か、リース会社など第三者のものかを一つずつ確認してください。

リース品は、前の店と買主の合意だけで自由に処分・引継ぎができると考えないこと。契約先へ手続きを確認します。無償の設備でも、壊れたときの負担、撤去の可否、保証の有無を空欄にしないようにします。参考:飲食店ドットコム・居抜きで出店する際の注意点。

設備は一台ごとに写真と取得条件を対応させる

「厨房設備一式」という言葉だけでは、どの機器が、誰の所有物として、どの状態で残るのかが曖昧になります。一台ごとに番号を付け、写真・型番・取得条件を同じ記録にまとめましょう。次の項目は、見学時に自分だけで全て判定するためではなく、所有者や担当業者へ質問を渡すためのものです。

一台ごとに残す設備記録
記録する項目 具体的に記載すること
設備と写真 管理番号、設備名、設置場所、写真番号、型番、数量。銘板は管理者の許可を得て確認する
誰のものか 所有者、貸主設備か借主設備か、リース・レンタルの有無。説明の根拠となる書類も確認する
引渡し後の扱い 有償譲渡・無償譲渡・貸与・撤去・未定の別。使えることと所有権を取得することを分ける
確認した状態 確認日、確認者、実施した動作確認、確認できなかった点、修理履歴の有無
自店で使う条件 予定用途、電源・ガス・給排水等の条件、専門業者へ確認する事項、必要な貸主承諾
支払と責任 取得代金、修理・搬入接続・撤去の負担、保証の範囲、見積書番号。未確定額は未確定と記す
引渡し時の照合 当日の写真、現物と数量、接続状態、合意との差異、対応する人と期限

手洗い器も、この設備記録の対象です。内見時に付いていても、前の店が持ち出す条件なら、引渡し後に不足する可能性があります。図面上の位置と一覧を合わせ、残すもの・撤去するもの・新設するものを区別します。自店の営業内容に必要な施設については、工事前に管轄保健所へ相談してください。

冷蔵庫の電源が入ったことと、必要な温度・運転状態が確認できたことは別です。確認範囲を曖昧にせず、設備の試運転や電気・ガスの判断は管理者の許可と専門業者の立会いのもとで行います。無断で通電・点火・分解・接続をしないでください。

記録表は、契約書や設備一覧の代わりにはなりません。食い違いがあるときは、契約当事者と担当者に確認し、誰がいつ何をするかを合意書等に反映します。

5.手洗い設備は、内見時と引渡し時の二度確認する

内見で手洗い器を見たからといって、その設備が引渡し後も残るとは限りません。前の店が設備を撤去・持ち出す予定なら、必要な設備が足りなくなる場合があります。厨房内の手洗い器、便所の手洗い、シンク、給湯器などは、残す設備を図面と一覧で明確にします。

食品関係営業の施設基準では、手指を洗浄消毒する流水式の手洗い設備や、洗浄後の手指の再汚染を防ぐ水栓の構造などが確認事項になります。単に水が出ればよいとは判断せず、自店の営業内容と配置について保健所へ相談してください。足りない場合は、設置・接続費と工期を開業計画に戻します。参考:新宿区掲載・食品関係営業許可申請の手引。

6.営業許可は、自分たちの開業手続きとして準備する

物件と設備だけを引き継ぎ、新しい営業者として飲食店を開く通常の居抜き開業では、自分たちを営業者とする営業許可の取得が必要です。前の店の許可証が残っていても、それだけで営業を始めることはできません。予定メニュー、製造・販売方法、施設図面を用意して、工事前に管轄保健所へ相談します。

なお、営業そのものを譲り受ける「事業譲渡」には、所定の届出等による営業者の地位承継制度があります。これは物件や厨房設備を購入するだけの話とは別です。自分たちの契約がどちらに当たるか、設備変更で手続きが変わらないかを保健所に確認し、無手続きの引継ぎと混同しないでください。参考:台東区・新たに食品に関する営業を始める方へ、新宿区・営業許可等の手続き(地位承継届)。

7.消防・建築の確認は、保健所の許可と分ける

保健所、消防署、建築関係の窓口は、それぞれ確認する内容が異なります。工事をしない居抜きでも消防への使用開始の届出等が必要になるため、予定する使い方を管轄消防署へ伝えましょう。建物全体の用途や面積、避難経路、厨房・ダクトの状況が判断に関わります。

用途変更や改修の確認申請の要否、建築関係法令への適合は、建築士や行政の窓口に確認します。小さい店舗だから確認不要、以前飲食店だったから問題なし、とは決めつけません。参考:東京消防庁・テナント入居の事前相談、東京消防庁・新たにテナントを使用する方へ、国土交通省・既存建築物の活用。

8.造作を買う契約と、店舗を借りる契約を揃える

設備を譲り受ける話がまとまっても、それだけで店舗を借りられるとは限りません。貸主・管理会社へ入居条件、予定業態、工事・看板の承諾を確認し、設備の譲渡契約との整合を取ります。直接賃貸か転貸かによって契約相手も変わるため、誰がどの承諾を得るのかを明確にしてください。

設備の代金を払ったのに賃貸契約が成立しない、引渡し日がずれる、といった場合の扱いも確認事項です。支払時期、契約成立の条件、解約・返金条件を契約担当者に確認し、口頭説明だけで決済を進めないようにします。

9.定期借家・退去条件まで含めて判断する

定期建物賃貸借は、契約期間が満了すると更新なく終了する仕組みです。再契約できるという期待だけで、長期間の投資回収を計画しないことが大切です。契約の種類、期間、中途解約、再契約の扱いを確認しましょう。参考:国土交通省・定期建物賃貸借。

原状回復も「居抜きで借りたから居抜きで返せる」とは限りません。撤去範囲、前の店からの設備を含むか、保証金の償却、解約予告、造作の再譲渡の条件を契約書で確認します。事業用店舗に住宅向けの説明をそのまま当てはめず、判断に迷う条項は宅建業者や弁護士などへ相談してください。

10.初期費用は「開店できる状態まで」で比較する

比較するのは造作譲渡料だけではありません。物件契約時の支払、譲渡代金、不足設備、修理・清掃、撤去、内装・設備工事、搬入・接続、開業前家賃、申請・保険、備品・初回仕入などを、同じ範囲で並べます。見積書の「別途」がどこまであるかも確かめます。

保証金など将来返還される可能性のある預け金も、開業時には現金が必要です。ただし、その支出をすべて会計上の費用として扱うわけではありません。初期の必要現金と、損益計算を分けて管理します。参考:日本政策金融公庫・創業の手引+ 飲食業。

無償の設備と有償の設備を同じ範囲で比べる

造作譲渡料が無料なら、その分の取得費を抑えられます。ただし、引き継いだ設備を使うための修理や、自店に足りない設備の追加が必要なら、その支払も合わせて比較します。反対に、譲渡料があっても、自店で使える設備が多く工事が少なければ、開業までの必要現金が小さくなる場合があります。

以下は考え方を示す仮定例です。金額は相場や実際の見積りではありません。
A店とB店は同じ業態を開く想定で、月の家賃支払額はいずれも30万円と仮定します。開業前に家賃が発生する期間だけがA店は2か月、B店は1か月。各欄は税負担が生じる項目についてそれも含めた支払額の仮置きで、項目同士の重複はないものとします。

開業までの支払比較 単位は万円
支払項目 A店 設備を無償取得 B店 設備を有償取得
物件契約時の支払
保証金等を含む。下記の開業前家賃は含めない
180 180
設備等の譲渡代金 0 120
不足設備の購入・修理・必要工事
下記の撤去・清掃・接続を含めない
260 90
不要設備の撤去・清掃・搬入接続
上の工事見積りと重複しない範囲
50 30
開業前家賃
A店30万円×2か月、B店30万円×1か月
60 30
申請・保険・備品・初回仕入 50 50
開業までの支払合計 600 500

この仮定では、譲渡代金を120万円支払うB店の方が、開業までの支払合計は100万円少なくなります。A店の修理・工事費や準備期間が小さくなれば結論は変わるため、「無料は損」「有料は得」という意味ではありません。

保証金など将来返還される可能性のあるお金も支払合計に含めていますが、すべてが会計上の費用になるわけではありません。また、この表には開業後の運転資金と予備費を含めていません。資金繰り表で、開業後の売上入金までに必要な家賃・人件費・仕入等を別に確保します。公庫の創業資料も参考に、設備資金と運転資金を分けて整理してください。参考:日本政策金融公庫の飲食業向け創業の手引。

実際に比べる際は、見積書の「別途」の内容、工事が長引いた場合の支払、退去時の原状回復も確認します。初期支払だけでなく、営業中と退去時まで含めて自店に合う条件か判断しましょう。

11.ピークの販売目標と設備能力を混同しない

仮にピーク1時間の販売目標を60食とすると、平均では1分に1食を提供する計画です。ただし、これは需要目標の割り算であり、厨房が60食作れる証明ではありません。主力商品ごとの調理時間、同時調理数、盛付、洗浄、人員配置を別に確かめます。

実際には注文が短時間に集中します。まとめて作れる工程と一人ずつ対応する工程を分け、模擬営業で測定してください。冷蔵庫の扉を開けると人が通れない、盛付と下膳が同じ場所になる、といった配置の問題も、図面と現場で確認します。

12.故障への備えは、金額と時間の両方で持つ

残す冷蔵庫や製氷機は、動作確認に加え、型番・年式・修理履歴・保守窓口を記録します。確認は管理者の許可と専門業者の立会いのもとで行い、電気・ガス設備を自分で分解したり接続したりしないでください。

予備費だけでなく、代替機の調達日数や搬入経路も確認します。「故障したら新品にする」予定でも、扉幅や階段の条件で交換が難しいなら営業に影響します。修理可能か不明な設備は、見積りが出るまで再利用の確定額に含めない扱いが適切です。

13.安い家賃でも、売る時間と合うかを見る

ランチ中心なら平日昼、夜営業なら夕方以降に、自店の客層が店前を通るかを観察します。通行量だけでなく、入口の見つけやすさ、入店しやすさ、近隣店舗との違いも確認しましょう。前店の閉店理由は、分かる範囲で聞き、立地や設備の問題と経営者個人の事情を分けます。

営業時間・仕込み・搬入・ごみ出しの制限も事業計画に照らします。厨房を安く取得できても、主力商品を売りたい時間に営業できなければ、収支の前提を見直す必要があります。

14.内見後は「未確認事項」を担当者と期限に変える

持ち帰るのは写真だけではなく、確認先と返答期限です。貸主承諾は管理会社、設備能力は専門業者、施設基準は保健所、消防関係は消防署というように振り分けます。分からない項目を自分で「問題なし」にしないことが重要です。

登録不要の内見・引渡しチェックリストでは、「確認済み/要対応/未確認」と、根拠資料・担当者・期限を記録する形にしています。点数が高ければ契約してよいという採点表ではありません。

回答だけでなく根拠資料と未解決点を残す

内見後は「良さそうだった」という感想と、契約までに確認する条件を分けます。次のように質問を具体化すると、返答の相手と必要な資料を整理できます。回答がない項目は「問題なし」にせず、未確認として残してください。

契約前の質問と確認先の例
質問 主な確認先 対応させる資料
設備を買う合意の後、店舗の賃貸契約が成立しなかった場合、代金はどう扱うか 譲渡・賃貸の当事者と仲介担当者。法的な解釈は弁護士等 各契約の成立条件、支払時期、解約・返金に関する条項
手洗い器や給湯器を撤去する場合、必要な設備を誰がいつ設置するか 契約当事者、設備業者。施設の要件は保健所 撤去後の図面、引渡し設備一覧、工事見積り、工程表
予定する調理機器を同時に使えるか。増設が必要なら承諾と工事は得られるか 設備業者、貸主・管理会社 予定メニューと機器表、能力確認資料、承諾内容、見積り
仕込み、営業、搬入、ごみ出しの時間は計画に合うか 貸主・管理会社、契約担当者 契約書、建物の規則、予定する営業時間と作業時間
退去時に、前の店から取得した設備も撤去する必要があるか 貸主・管理会社、契約担当者。判断が難しい条項は専門家 原状回復範囲、造作の再譲渡条件、保証金の扱い

これらは契約可否を自動判定する採点表ではありません。重要な条件が未確認なら、確認先と期限を決め、判断や支払の前に必要な回答を得ることが目的です。

内見から引渡しまでの全体確認には、内見・引渡しチェックリストも併せて使ってください。

15.引渡し日に、設備一覧と現物を照合する

手洗い器、シンク、給湯器、冷蔵庫、作業台などが、合意した状態で残っているかを確認します。写真番号・型番・数量を照合し、可能な動作確認の範囲を事前に調整してください。内見時に使えた設備でも、撤去工事後の接続状態が変わっている可能性があります。

不足や相違があれば、補う人・費用・期限を当事者間で確認します。許可検査や開店予定への影響も整理し、必要設備が未整備のまま営業を始めないようにします。

よくある質問

設備が無料なら、居抜きはお得ですか?

予定メニューに使える設備を無償で取得できれば、新規購入費を抑えられます。ただし、所有権の扱いと、修理・撤去・接続・不足設備の費用を確認し、開店までの必要現金で比較してください。

前の店の営業許可を使えますか?

物件と設備だけを引き継ぐ通常の新規開業では、自分たちの営業許可を取得します。別途、事業そのものの譲渡に伴う地位承継制度はありますが、所定の手続きが必要です。管轄保健所に確認してください。

手洗い器が撤去されていたら?

引渡し条件と設備一覧を確認し、管轄保健所へ相談したうえで必要な設備を整えます。誰が費用を負担するかは契約・合意に基づいて確認します。

TCTに相談できること

Team Cafe Tokyoは、実店舗運営、メニュー・商品開発の視点から、コンセプト、メニュー構成、厨房・提供動線、人員配置、運営計画の相談を受けています。希望業態、開業エリア、時期、主力メニュー、物件の検討状況をお知らせください。

この相談窓口は、不動産仲介や契約の法律判断、営業許可の取得可否を保証するものではありません。物件契約は宅建業者、法律判断は弁護士、設備・建築の適否は専門業者と行政窓口へ確認してください。

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編集方針と確認日

制度・公的情報の確認日:2026年10月15日。公的機関と業界事業者の公開資料を照合し、TCT編集部が独自に構成・執筆しました。他社の記事・写真・事例の転載ではありません。個別物件の適法性や費用を保証するものではなく、手続きと設備の適否は必ず所管窓口・専門家へ確認してください。

2026年10月21日追記:設備の引継ぎ記録、開業までの必要現金の比較例、契約前の質問例を追加しました。費用比較の数字は考え方を示す仮定例であり、実際の見積りや相場ではありません。

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